日々の食卓を彩る食材。できれば体にいいものを選びたいですよね。例えばスーパーの棚を見ると、「レモン50個分のビタミンC」「カルシウム強化」「ポリフェノール10倍」等々、それぞれが特長をアピールしていて迷ってしまいます。こんな時に目安の一つとしたいのが<機能性表示食品>。玉石混交の品揃えの中から適切な食材を選ぶには? さまざまな情報が飛び交う健康食品についてまとめました。
<健康食品>という言葉の意味は?
お店でも「健康食品売り場」ネット通販でも「健康食品販売サイト」を普通に見かけます。でも、この<健康食品>という表現には明確な法的規定がありません。一部のwebサイトには、「医療品と食品の中間に位置すると考えられている」とありますが、その表現の使用は製造・販売業者の任意であり、通常の食品と変わらなくても法的に訴えることはできません。
規定がないことをうまく利用した<自称・健康食品>や<機能性食品>などの名称を使った商品が市場に溢れ、その数は数千種類に及ぶと言われます。そこで、消費者庁が2009年に新たな基準を設けました。
それが<機能性表示食品>です。
なお、web上には更新されていない古い情報があります。例えば機能性食品の科学的根拠を強調した某企業のサイトは、2001年を最後に更新されていません。
機能性食品と機能性表示食品はどう違うのか? こんなサイトを見ると、ますます混乱してしまいます。
コカコーラやサントリー、アサヒビールなど、食品大手はみな消費者庁の公表した情報を元に自社のサイトで説明しています。本記事でも、消費者庁の定めた規定に従って説明したいと思います。
<機能性表示食品>って何?
食品の分類
- 一般食品:機能性表示ができない、いわゆる普通の食品。栄養補助食品・健康補助食品・栄養調整食品といった表示で販売されているのは、この一般食品に該当します。
- 保健機能食品:機能性の表示ができる
1.特定保健用食品(略称「トクホ」)
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、効果や安全性は国が審査を行い、消費者庁長官が許可します。
2.栄養機能食品
一日に必要な栄養成分が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できます。すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、届け出なしで、国が定めた表現によって機能性を表示することができます。
3.機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。あらかじめ、安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届けられたものです。ただし、トクホとは違って、消費者庁長官の許可は受けていません。
さて、<機能性>とは何でしょうか?
例:
高脂血症の治療に役立ちます ×
脂肪の吸収を穏やかにします ○
保健機能食品は、「疾病に罹患していない人」を対象としています。
ですから、薬効を謳うのはNGですが、
特定の保健の目的が期待できる=健康の維持・増進に役立つ
といった程度の表現はOKとなります。
医療目的との誤解を招く言い回しでなければよい、ということですね。
最近盛んに売り出されている『賢者の食卓』(大塚製薬)を見てみましょう。
『糖分と脂肪の吸収を抑える。食物繊維が働くWトクホ。』
トクホならわかりますが、<Wトクホ>って何? 糖と脂肪の2つに効果があるから<W>としたようです。企業の造語ですね。薬効と機能性の境目は、けっこう曖昧に見えます。企業側としては、そこが狙い目なのかもしれません。
機能性表示食品の特徴・注意点
この制度が設けられた背景には、「トクホ」の取得に多額の費用と時間がかかり、中小企業に不利であったことが挙げられます。つまり、多くの企業が参入できるよう、規制緩和の一環として作られた制度です。
消費者の選択肢が広がったことを行政側は強調していますが、国の許可を受けていないわけですから、購入に際しては、消費者の自己判断に委ねられます。
その企業が信頼に足る業者なのかどうか、国が保証していないのです。ただ、届け出られた情報は消費者庁のwebサイトで閲覧できます。
「許認可制」ではなく「届け出制」であることを念頭に置いておく必要がありますね。行政が、安全性・機能性の審査なしで届け出を受理するのですから、事実上、許認可したのと同じでは? そうとも思えてしまいます。
いわゆる「お墨付き」をもらわずして官庁の威光を活用できる、企業にとって便利な制度。うーん、ちょっと言い過ぎでしょうか?
結び
誰でも容易に情報を入手できる時代だからこそ、自己責任の範囲が広くなったと言えます。私たち消費者も、常に勉強していなければなりません。
過去のさまざまな制度の例から考えると、規制の盲点を突いた商法や、規制を骨抜きにしようとする企業の裏工作など、消費者のためにならない「売る側に都合のよい視点」に立った動きが起こる可能性も否定できません。
日々のニュースに関心を持ち、消費者主権を侵すような動きがないかどうかチェックするのも重要なことではないでしょうか。
これを機会に、より賢い消費者であることを心掛けましょう。
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